自殺とうつ病

2022/05/14

 最近のニュースで、ショックだったものは、66歳の渡辺裕之さん、61歳の上島竜兵さんの訃報です。蒼野は62歳、お二人がどんな気持ちだったのかは、全く想像もつきませんが、それまでの活躍を知っているだけに、「どうして」という気持ちにならざるを得ません。

 蒼野自身は、幸か不幸か、本当に脳天気で、今までに死のうと思ったことはほとんどありません。なので、お二人のお気持ちを本当に理解することはできないと思うのですが、健康を自ら手放してしまうということに関して、一度考えておきたいと思います。

 一般的なお話からです。警察庁WEBサイトによると、令和3年の自殺者数は21,007人。対前年比74人(約0.4%)減だそうです。グラフを見ると平成10年から急増し、平成15年に自殺者はピークの34,427人だったことを考えると、かなり減ってきており、蒼野としては少し意外でした。

 コロナの影響でかなり増加しているのではと想像していたからです。しかし2019年の、世界の10万人あたりの自殺率では、1,韓国 2,リトアニア 3,スロベニア 4,ベルギー についでの第5位なのです。いずれの国でも男性が多く、コロナ禍になって女性の自殺率は増加傾向にあるようです。日本人は、幸せを感じている人が少ないのかもしれませんね……。

 自殺理由に関しては、一つの理由だけではないことはわかっているものの、一応統計が出ています。健康問題が38%、家庭問題、経済生活問題がそれぞれ14%、勤務問題が7%、以下男女問題、学校問題などが続き、不詳が19%となっています。平成10年の急増時には健康問題と経済生活問題が急増したようです。平成元年のバブル崩壊後、どうにもならなくなった年代だったのでしょうか?

 さて令和3年のデータに戻ります。20歳代、40歳代~50歳代で増加、男性は減少傾向で、女性は増加しました。特に50代が大きく増加し、60代は減っています。しかしまだ66.4%は男性で、女性の2倍です。職業別では無職者が55.4%で最多。被雇用者は31.9%、自営業6.2%、学生4.9%です。データからは、仕事もなく、お金もなく、健康に不安があって、社会から孤立した存在である人がそういう気持ちになりやすいのでしょうか?

 60代は生活が大きく変わる年代です。定年を迎え、今までの職場を離れる人も多いかと思います。また会社内での立場が変わったり、家庭にいる時間が長くなったりもします(3/27ブログ、https://blue-zone-life.com/定年後の孤独と妻のストレス/ 参照)。また自身の老化、健康状態の悪化についても、自覚する場面が増えてくる年代です。蒼野は同年代の方の健康を特に応援したいと思ってしまいます。

 蒼野は自殺の様々な理由を解決することはできませんが、健康問題が自殺につながってしまうことに関しては、日頃の生活習慣の改善で、ある程度防ぐことができるのではないかと思っています。自殺者の70~90%が何らかの精神疾患に罹患しており、60~70%はうつ病であったとされています。うつ病になると、自殺率は激増するそうです。

 うつ病の本当の原因はまだ解明されていません。ベースに精神的ストレスがあるのは間違いないのでしょう。ストレスはその人の性格とか受け取り方によって変わります。うつ病には遺伝子はありませんが、生育環境や、生真面目、完璧主義、責任感が強いというような性格などに遺伝子が影響して、なりやすい人というのは存在します。

 元気なうちから、ポジティブな物事の受け止め方、考え方を身に付けておくことは重要だと思います。そして疲れた時にはしっかり休むこと、良質な睡眠を確保することは最優先で考えるべきです。過去と他人は変えられません。様々な人間関係や怪我や病気など、考え方を変えても憂鬱になることは沢山あると思います。しかしどうにもならない事を悩んでも、解決することはないので、そのまま放っておきましょう。

 思い悩んでいると眠れません。睡眠が取れなくなると、体調が悪くなり、疲れが溜まります。食欲もなくなります。食べるものも偏ります。このエネルギー不足がうつ病の始まりです。しかし自覚できる人はほとんどいない様です。うつ病が進行すると、解決の様々な選択肢が見えなくなります。そうなると死ぬ選択肢しか残っていないように思えるのではないかと思います。

 死ぬという選択肢よりも、職場がブラックなら、辞めましょう。うつ病と診断をもらえば、長期休暇も取れます。パートナーが最大のストレスであれば別れましょう、生活が出来ないのであれば生活保護があります。視野が広ければ、もっと賢い選択肢はあるはずです

 うつ病で、メンタルクリニックを受診している人は2割程度だそうです。日本ではまだメンタル疾患に罹ることは、人に言えないと思っている人が多い様です。メンタルクリニックを受診して細かい話を聞いてもらったほうがいい段階かどうかがすぐにわかる「PHQ―2」という質問があります。

 半月以内の状況として、①何ごとにもほとんど興味がなく、楽しくない。②気分が重かったり、憂うつで絶望的な気持ちになったりすることがある様なら、気軽に相談に行ったほうが良いのです。何も出来なくなって、仕事も学校も休む様になる程、重症化すると、改善するのに何年もかかる事が多くなります。

 軽いうつ病であれば、治療によって3~6ヶ月で回復する人が多いです。しかし再発率は高く、回復後2年以内に50~60%は再発します。放置した場合には、運が良ければ6~12ヶ月くらいで自然に軽快することもある様ですが、うつ病はメンタルの風邪!と言われるような軽い疾患ではありません。おかしいなと思ったら、是非専門家に相談しましょうね!

 うつ病の病態に関する仮説が幾つも提唱されています。
1、脳内のセロトニンや、ノルアドレナリンなどのモノアミンが低下していること。
2、ストレスによるコルチゾールの分泌過多による、海馬を始めとする脳への影響。
3、海馬からのBDNFの分泌が低下することで神経の新生や、シナプスの形成がうまくいかなくなること。
4、脳の神経細胞を補助し、脳内環境の維持、調整に働くミクログリアから炎症性サイトカインが分泌されることで、セロトニンが減ったり、BDNFが減ったりすること。 

 まだ原因についての確定はしておらず、仮説の段階ではありますが、それぞれの現象は、うつ病患者の身体で起こっていることが確認されています。セロトニンを増やし、コルチゾールを減らし、BDNFを増やす生活を心掛けるのが良さそうですよね。それでは具体策です。

 蒼野のNo.1は、運動です。出来ることからになりますので、まず朝散歩ですね。体内時計をしっかり太陽の時計に合わせる効果も高いため、睡眠も改善しやすくなります。もちろん、出来る様になったら、少し長めのウォーキングやジョギング、HIIT、筋トレなどにトライしましょう。コルチゾールを消し、BDNFを増やすため最高です。

 N0.2は、毎日楽しみながらの休養です。お風呂、サウナ、他人との会話、自然に触れる、音楽や映画、ペットと遊ぶなど、自分の好きなことで楽しみましょう。セロトニンを始めとする幸せホルモンが出てきます。ゲームやスマホなどは適度でお願いします。やりすぎると夜型になる上、精神的にも疲れが溜まってしまいます。早寝早起きは重要です。

 N0.3は腸内環境の改善です。腸の健康は、脳の健康に密接につながっています。善玉菌を増やすのが重要です。体内のセロトニンの90%は腸で作られます。食べ物を変えたらうつが治ったと言う話は山ほどあります。糖質や腸加工食品は減らし、食物繊維豊富な食べ物や、発酵食品を積極的に摂りましょう。特に短鎖脂肪酸は重要です( 3/10ブログ https://blue-zone-life.com/短鎖脂肪酸/ )。美味しくて栄養のあるものを選び、アルコールは減らしましょう。

 結局、メンタルの健康も、食事、運動、睡眠の改善に尽きる様です。亡くなられた方は、ご冥福を祈ることしかできませんが、生活がきつい、体調が悪いと自覚がある方は、エネルギーが残っている間に、是非生活改善から取り組んで欲しいと思っています。

 4月から職場が変わりましたが、新しい未来を夢見て、ますますワクワクしている脳天気な蒼野でした。

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