抗生物質の光と闇! 感染初期の対処法!

2023/07/06

 現在蒼野の担当患者数は33人です。寝たきり意識障害の人が多いので、何かにつけて発熱の報告が入ります。寝たきりの状態からの死因としては、肺炎が最も多いので、抗生物質を使う機会も結構多いです。しかし外来は違います。風邪やコロナで喉が痛い患者様の中には、未だに抗生剤処方を希望される方が居られます。今日は抗生物質について書いてみたいと思います。

 うちの母親は、蒼野が小さい頃から抗生物質に絶大な信頼を寄せていました。かかりつけの先生にお願いして、自宅に抗生剤をストックしており、少し喉が痛いとか、熱が出たとなると、必ず抗生剤を飲んで、そのおかげで治ったと言っていたので、蒼野も何かあると飲まされていました。しかし、その時代、蒼野はお腹が弱く、すぐに下痢をする子供でした。今考えると、抗生物質の副作用をバッチリ受けて育ったような気がします。

 抗生物質というのは、細菌を殺す薬です。1929年、イギリスの細菌学者 フレミングがブドウ球菌を培養していたところ、偶然培養皿のなかにアオカビ(Penicillium notatum)が生えているのを目にしました。カビの周りにはブドウ球菌が生えていないのを見て、カビの成分の中に抗菌作用があることに気づき、世界で初めてペニシリンという抗生物質が発見されたのです。

 これは近代の西洋医学において、エポックメイキングな出来事でした。抗生物質が出てくるまでは、肺炎や結核、傷からの感染、性感染症などの感染症で多くの人が、亡くなっていました。それが抗生剤で原因菌の増殖を止めたり、殺したり出来るようになり、飛躍的に救命率が上がったのです。これが西洋医学全盛の現代に繋がってゆくことになります。

 おそらくうちの母親も、どんな感染症でも抗生剤で治ると信じていたのでしょうね! 当時の情報がそれしかなかったのかも知れません。もちろん抗生物質が必要な疾患は、今も存在しますが、ある意味、乱用されることによって、様々な問題が生じていることを知らなければいけません。今は全く下痢しない蒼野は、当時数ヶ月に1回飲んでいた抗生剤が悪かったと思っています。

 咳や鼻水などの症状から始まる風邪(コロナも)は、ウイルス感染症です。抗生物質は効果はありません。しかし他院から出された処方や、自院のカルテでも、抗生剤が処方されているケースを、未だに多く目にするのです。抗生剤を欲しがる患者様に、いちいち説明するのは大変です。それよりも処方して、多くの患者様を診た方が利益になるというのは、はやっている開業医さんでは”あるある”なのかも知れません。

 抗生剤に副作用がなければ、それも構わないかも知れないのですが、抗生剤使用には副作用があります。たった1回使用しただけでも腸内細菌の1/3が死んでしまうのです。残りやすい細菌は、抗生剤に耐性のある悪玉菌です。腸内フローラの組成が変わり、悪玉菌優位になりやすく、抗生物質関連下痢、クロストリジウム・ディフィシル感染症(薬剤耐性菌による偽膜性腸炎)といった問題が発生します。

 繰り返し抗生物質を使用すると、体内の腸内フローラが永続的に変化する可能性もあります。1回抗生物質を使うと、2年後まで腸内フローラは元の状態には戻らないそうです1)。恐ろしいですよね! 母親から受け継いだ、日本人の腸内フローラが、抗生剤の乱用で失われてしまうかも知れないという事です。これは肥満、自己免疫疾患、アレルギー、全身の慢性炎症にもつながります。

 もう一つは耐性菌の問題です。細菌も生き残りをかけて遺伝子を変化させます。耐性菌は抗生物質の使用で始まった訳ではなく、細菌同士の生き残りのための戦いでも生まれてきます。興味深いことに、人間が立ち入ったことがない、地層的には400万年前のニューメキシコのカールズバッド洞窟群の深部の壁から採取された細菌を調べてみると、その中に現代の抗生物質に対する耐性を有するものが見つかっています。

 これは細菌たちが生存競争の中で、相手の発育を邪魔する物質(抗生物質)を作り出したり、それに対抗して生き残る耐性を獲得したりして、進化してきたことを意味しています。すでに自然界には抗生剤に耐性のある菌が存在していると言うことです。抗生物質の投与で、耐性菌以外の菌が死んでしまえば、耐性菌が増殖し、広がってゆきます。

 現代医学でも、耐性菌による重症感染症は致命的なのです。細菌同士が牽制しあっている状態を、抗生物質を乱用することで、耐性菌優位の世の中にしてゆくことは、やがて我々の首を絞めることにつながります。耐性菌だらけの世の中になれば、抗生物質以前の世界に戻ってしまうのです。抗生剤神話はもはや都市伝説です。ウイルス感染症に使うというのは、デメリットしかないことを知って欲しいと思います。

 それではウイルス感染症にはどうやって対抗すれば良いのでしょうか?一言で言うなら、自分の免疫力を上げる物を、しっかりと補給するという方法です。まず最初はビタミンCです。ビタミンCはリンパ球の生産や免疫細胞の機能改善に働きます。感染に対抗して炎症が起こった時の余分な活性酸素を中和し、免疫細胞自体の傷害も防ぎます。

 結核菌や、胃癌の原因になると言われているヘリコバクターピロリ、食中毒の原因菌などに対しては、ビタミンCの直接の抗菌効果が発見されています。ビタミンCはウイルスや、寄生虫に関しても効果があることがわかっているため、それらによる感染症の予防のためにも、日頃からしっかり摂取しておきたい栄養です。食べ物で言えば、野菜と果物ですよね!

 古くから抗菌作用があるとされている食べ物としては、ニンニクと生姜が挙げられます。ニンニクのアリシンには抗菌、抗真菌、抗酸化作用があります。刻んだり、すりおろしたり、潰したりすることで出てくる物質なので、その点を意識して食べましょう。生姜のジンゲロールや、ショウガオールにも抗酸化、抗炎症、抗菌特性が報告されています。

 日本ではあまり馴染みがありませんが、古代ローマ時代から、伝統医学や自然療法で使われてきたのが、オレガノオイルです。抗菌、抗ウイルス、抗真菌、抗炎症の特性が報告されています。ウイルスのエンベロープを溶解するなど、病原体を直接的に阻害する作用があるようです。かぜや気管支炎、頭痛、生理痛、疲労倦怠感の回復に役立つと言われています。消化器系の不調の緩和にも役立ちます。

 SIBOやIBSなどに、抗生剤を投与しても、真菌には効かないため、オレガノオイルを試してみるのはアリだと思います。妊婦さんには使ってはいけないようですが、その歴史からすれば、副作用は考えにくいので、引きかけた風邪の時に、カプセルを頓用してみるのは、試してみる価値があるかも知れません。喉にはマヌカハニーの併用がお勧めです。

 最後は漢方薬です。紀元後200年頃に書かれ、葛根湯など、今もその処方が残っている『傷寒論』は急性感染症に対して作られた処方集です。もちろんウイルス感染症に対しても効きます。西洋的な風邪薬(総合感冒薬)は、対症療法に過ぎないため、熱を下げ、かえって自己の免疫力を邪魔します。

 蒼野の処方経験でも、自分や家族に使ってみた経験からも、本格的に風邪を引いた時は、早期に漢方から使ってみることをお勧めします。風邪がこじれて肺炎や副鼻腔炎になったりしなければ、決して抗生物質は使わないよう意識しておいて欲しいです。

 一番大事なのは、日頃から免疫力を高める生活習慣を送ることです。免疫の7割は腸ですので、腸内細菌を、善玉菌優位の良い状態に保ちましょう。自分に抗生剤を使うのは、清水の舞台を飛び降りる覚悟がないと出来なくなってしまった蒼野でした。

参考文献:
1)Long-term impacts of antibiotic exposure on the human intestinal microbiota. ; Microbiology 2010 156 (11) https://doi.org/10.1099/mic.0.040618-0

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