5類コロナとの付き合い方!

2023/05/10

 一昨日から、新型コロナは感染症5類に移行となりました。本日は午前の発熱外来で、1名コロナ感染を診断し、スタッフの一人も連休中に感染し、まだ頭がイタイと言っています。扱いは変わりましたが、コロナウイルスは現存していることには変わりません。蒼野自身も、コロナが終わって新しい時代になる、と思いたいのは山々なのですが、医療現場の現状も踏まえて、今後のコロナとの付き合い方を、皆様にも考えて頂きたいと思います。

 8日からインフルエンザと同じ扱いになったコロナ感染症ですが、蒼野の病院での、発熱の扱いはまだ変わっていません。寝たきりや高齢の方の多い病院ですので、入院が必要な方には、ウイルスの検査をして、陽性になれば受け入れは出来ないままです。発熱外来も、他の患者様と同じ待合室には入れず、隔離された部屋か、車での待機のままで、検査を行い電話でのやり取りとなります。

 基本的に病院は、病気の人がやってくる場所ですので、リスクの高い方の感染リスクは上げたくありません。入院患者様の面会も、予約制で、1回15分、会われる方はマスクやキャップ、ガウンなどを付けてもらいます。確かに社会的には行動制限はなくなり、感染対策は個人の判断に委ねられる、とされていますが、現実的にはまだまだ注意が必要であることは、理解頂けるでしょうか?

 ワクチンについても、うんざりされている方は多いとは思います。現在主流となっている変異株、「XBB.1.5」は、ウイルスを抑える中和抗体の働きは「BA.5」に対する場合のおよそ10分の1にとどまり、免疫を逃れる性質は過去最強の様です。それに加えて、細胞に侵入する鍵となる、ACE2受容体への結合力も最強で、従来の4.3倍になっているようなのです。

 ワクチンを打ったとしても、罹りにくくなる時期はかなり短く、誰もが罹りやすい性質が、強まっていると言えるでしょう。変異株の性質を考えても、重症化リスクが高い人と、元気なコロナ患者を同じ時間や同じ空間で診察するのは、大きなリスクがあるのです。国としては、5類になったのだから、診察できる医療機関が増えると考えている様ですが、小さなクリニックなどでは、時間をずらすくらいしか方法はないでしょうね。

 その時間に発熱患者が密集すれば、コロナではない発熱患者に、コロナが感染るというケースも考えられます。基本的にコロナはウイルス感染症ですので、その治療は医療機関を受診しても、対症療法の薬をもらって、症状を緩和するくらいしかなく、回復には自己の免疫力しかありません。仮に重症化した場合には、今までは保健所が入院できる病院を探してくれていましたが、今からは医療機関が個別に探さなければいけません。うまく見つけられない人も出てくると思います。

 今までの日本の感染者数は3000万人、ワクチンを2回以上受けた人の数と合わせると、ほとんどの方が、コロナウイルスに対する免疫は持っているものと考えられますが、それでも株の変異によっては、これからも感染者数の波は起こる可能性があります。今までは毎日報告されていた感染者数も、これからは週1回の指定医療機関からの定点観測になりますので、流行っているかどうかの判断も遅れがちになるでしょう。

 国は5類にしたことで、今までコロナが診れなかった医療機関での診察を進め、今まで入院受け入れできなかった医療機関も含めたすべての病院で、コロナ患者を受け入れるよう求めている様です。受け入れてどんな治療をすれば良いのでしょうね? 本当に重症の人は集中治療やエクモなどを使う必要があり、どこの病院でも出来る治療ではありません。

 先ほども書いたように、軽症の人に対する明らかな治療法は無く、とても感染しやすいウイルスを持った人を、重症化リスクを持つ、別の病気で入院している人の中に入れるというのは、どう考えても、鶏小屋に狐をわざと入れる様な気がするのは、蒼野だけでしょうか?

 さらに、高齢者のリハビリなどを行なっている地域包括ケア病棟においても、受け入れを積極的に推進する、としている様なのです。皆様は疑問に思われないでしょうか? 制度が変われば必ず混乱は起こると思いますし、見切り発車も必要だとは思います。でも何もかも、従来の5類感染症と同様の扱いにしてゆくのは、やはりリスクがある様な気がしてなりません。

 日本人の集団免疫は、ほぼ成立している可能性は高い様に思いますが、コロナに複数回、罹る人も多く居られます。罹った時の急性の重症化は、緩和されているのではと期待しますが、後遺症については別問題の様です。様々な研究が行われていますが、未だにコロナ後遺症についての、明らかなメカニズムは分かっていません。

 メカニズムが分からなければ、有効な薬もできませんよね! 現在の後遺症治療は、経験的に日常生活での注意と、漢方薬、鼻うがいやBスポット療法などが行われています。感染の時の症状が軽症でも、日常生活が送れないような、疲労感や倦怠感が出て、日常を奪われてしまうような重症の方も居られます。若くても学校に行けなくなった子がいると言うのも聞きます。

 いわゆる「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」(ME/CFS)と言う症状ですが、非常に悩ましい後遺症です。論文によると、この状態になった患者は、酸素消費量(VO2)が低下しており、様々な原因で、筋肉が酸素を使いにくくなっている状態の様です1)。まだ仮説の段階ではありますが、いくつかの可能性が考えられています。

 一部の研究では、腸などにウイルスが持続的に残っており、長期間感染状態が続くことで、筋肉細胞のミトコンドリアの機能が低下したり、腸内細菌叢が変化したり、免疫の過剰反応が続いて、全身の炎症が続き、様々な組織を損傷したり、筋肉に分布する微小な血管を障害することで、筋肉に十分な酸素が供給できなくなったりしているのでは無いかと推測されています。

 2023年の最新研究では、ME/CFS患者は健康な人に比べて、善玉菌である酪酸菌が少ないことが判明しました2)。コロナ後遺症にも関係している可能性が指摘されています。論文の著者は、対策として、砂糖や添加物、酸化油や加工肉、赤身肉など、炎症に繋がる食品を減らし、発酵食品と食物繊維を多く摂ることを勧めています。

 アメリカでは累計のコロナ感染者は8000万人を超えていますが、そのうち770万人~2300万人の人が、コロナ後遺症に苦しんでいると言われています。そのうち250万人が、ME/CFSで、社会復帰ができなくなっている様です。そしてその数は、現在も急増中です。

 ME/CFS以外の後遺症としては、脳の霧として有名な、中枢神経の後遺症も重大です。短期記憶が喪失し、集中力が無くなり、言葉が出てこなくなり、仕事も勉強も難しくなります。イギリスでコロナ前にMRIを撮影していた51~81歳の785人を対象に、3年ぶりにMRIを撮影した研究があります。401人が新型コロナに感染し、入院した人は15人でしたが、軽症の新型コロナ患者でも、感染から4カ月半で脳が平均0.2~2%ほど減っており、海馬の神経細胞が詰まった灰白質が薄くなっていることが観察されています3)。

 注意力、視覚的探索能力、処理速度なども感染前に比べて急速に低下しており、程度は軽く、日常生活に影響は無くても、コロナ感染の脳への影響は、かなり深刻な様なのです。まだ分かってはいませんが将来の認知症に進む可能性も示唆されています。やはり本当に罹りたく無い病気だなあと、思いますし、感染を繰り返すほど、様々な影響が出る様に思います。

 コロナ前に戻ったかのようなニュースが多く報じられていますが、手放しには信じられないと、思っている蒼野です。感染対策は本人の判断とされていますので、もしコロナはもう大丈夫だと思われている方がおられましたら、この現実を、後遺症に苦しむ前に知っておいて欲しいなあと思い、あえて書かせて頂きました。

 最大の対策は、自分の免疫力を強化することです。気持ちは明るいままで良いので、酪酸菌を増やし、疲れやストレスをやり過ごしながら、生活習慣を整えた上で、これからの時代を、目一杯楽しんで行きましょうね!

参考文献:
1)Persistent Exertional Intolerance After COVID-19. ; CHEST INFECTIONS 161(1)54-63 2022

2)Revealing gut microbiome associations with CFS. ; Cell Host & Microbe. 31(2)171-172 2023

3)SARS-CoV-2 is associated with changes in brain structure in UK Biobank. Nature 604, 697–707  2022 

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