コロナが5類になったなら!

2023/01/22

 今日はまたではありますが、コロナの話題です。ついにこの春コロナが感染症第5類に格下げになる方向性が見えてきました。医療現場の実感として、その良い面と悪い面について書いておきたくなりましたので、ご興味がある方はお付き合い下さい。

 蒼野が勤めている病院は、発熱外来も、重症でない方限定の救急車受け入れも行なっているのですが、最近医療機関の逼迫をヒシヒシと感じています。というのは、他院かかりつけで、急変時などにはかかりつけ病院で受け入れられていた患者様が、病床が一杯という理由で、ひっきりなしに搬送されて来る様になったのです。

 翳りが見え始めたコロナ第8波ですが、感染者数は既に全数の把握は行なわれておらず、コロナに関する恐怖心も大分薄れてきています。調子が悪くなった人を中心に受診依頼があるため、軽症者や無症状者を含めた目に見えないベースの感染者は第7波を超えている様に思われます。実際に死亡者数は過去最高でもあり、致死率は下がっているということですので、感染力が高まっていると実感できるのです。

 感染で調子が悪くなる人の数が増えて、それがコロナ受け入れ可能な大きな病院にどんどん搬送されればパンクするのは目に見えています。現時点での2類相当のままであれば、現在受け入れ先がない事例が多発していることもあり、別の病気の救急の状態で高度な治療が必要な人が治療が受けれなくなっているというのが実情だと思います。

 これが5類になれば、季節性インフルエンザと同じ扱いになるため、高熱の風邪症状やコロナ肺炎などが、コロナ専門病院でなくても受け入れ可能となるのです。これは医療体制を維持するためには重要なポイントです。普通の治療をすれば助かる方が、医療逼迫で亡くなってしまう事態は絶対に避けるべきです。

 コロナ禍で楽しい学生時代、青春時代が送りにくかった。旅行にも行きにくかったという時代が過去のものになるのは、若い世代にとっては素晴らしいことですよね。メンタル疾患も減って来れば良いなあと願っています。

 ワクチンも行き渡っていないコロナの最初の致死率はとても高く、まさにパンデミックでした。デルタ株がメインだった第5波(2021年7月~10月)の致死率は60歳未満で0.08%、60~70代で1.34%、80歳以上で7.92%でしたが、第7波(2022年7月~8月)オミクロン株になると60歳未満で0.00%、60~70代で0.18%、80歳以上で1.69%と明らかに低下しています。

 第8波も去年までの時点では、オミクロン株が流行の中心でしたので、第5類への移行を検討しても良いのかも知れません。現時点では暖かくなった後のゴールデンウイーク前後に移行する予定らしいです。それでは移行後に予想される問題について考えてみます。

 5類になると、経済に邪魔になるような営業自粛勧告は無くなり、外出の自粛もありません。マスクも屋内でも義務ではなくなります。感染者や濃厚接触者への自宅療養・待機要請もなくなります。しかし急変時には、保健所が入院先を探してくれることもなくなります。自分で探すと言うのは困惑する場面が出て来る可能性があります。

 今までの5類と同じ扱いであれば、現在は公費負担のワクチン費用やPCRなどの検査費用、薬剤費、入院費なども健康保険範囲での自己負担となります。発熱すれば近所の一般のクリニックで診てもらうことになるはずです。つまり季節性インフルエンザと同じ扱いになると言うことです。

インフルエンザは学校では5日間休むことが決められていますが、会社では会社ごとのルールで動いています。コロナでも軽症であれば、外せない仕事のために出勤すると言うことにもなります。(これは検査を受けなければ現在も一緒かも知れません)。

 ワクチン費用は今まで通りであれば、配送費用を含めた薬剤費が2700円、医療機関に支払う費用が3700円ですので、ワクチンを追加で受け続ける人は減りそうですね! 一方コロナの抗ウイルス薬は、現在のシェアが90%と圧倒的なラゲブリオは、入院死亡リスクを30%抑制すると言うものですが、5日間投与で薬剤費は94000円と高額です。

 しかし2022年の10月に出たオックスフォードの平均年齢56.6歳、ワクチン接種を受けている26,000人の研究では、通常治療にラゲブリオを上乗せしても、入院や死亡の割合は差が出ませんでした。少なくとも、リスクの無い元気な人にはあまり意味がない可能性もあります。医療費の点を考えると、受診しない人が多くなるかも知れませんね!

 蒼野が心配なのは、5類になると高齢者や入院患者に感染が広がりやすくなる可能性でしょうか? 現在の病院ではコロナ禍になってからは、入院患者への面会は家族でも月1回、予防衣を着用して短時間で済ませてもらっています。入院患者様の免疫力は低いことが多いので、先日発熱された方があっという間にコロナ肺炎にまで進行し、高次の医療機関に搬送すると言うこともありました。

 屋内でのマスクさえ無くなる世の中で、面会がフリーになってゆくのは仕方ないかも知れません。しかし一般の80代でも致死率は1.69%。入院患者になるともっと高くなるのは目を瞑らないといけないのでしょうか? これは一般のクリニックでも同じです。普通は基礎疾患がある人が通っているクリニックにコロナの方が入って来ると言うのは結構怖い気がします。

 一気に変わってしまう訳ではなく、有識者も段階的にと言っていますし、これからの状況次第では慎重に進めてゆく必要があると思います。政治的にはメリットのほうが大きいのでしょうが、免疫力が低い人にとっては、自分で気をつけることが増えてゆきそうです。高齢者や持病がある人は自己責任という時代に変わってゆくのかなあと思います。

 懸念材料はもう二つあります。一つは変異株の問題です。コロナウイルスは短期間の間に大きく変異を繰り返すウイルスです。12月から急速にアメリカで拡大しているXBB.1.5株は、すでにアメリカの新規患者の50%にまで増えてきている様です。WHOも2022年12月時点で最も伝播性が高い変異株であると発表しています。

 これは過去のコロナウイルス2種類が一つの細胞に同時感染して遺伝子が混じり合い、全くあた新しいウイルスに変異したもので、ノルウェーに伝わっていた海の巨大ダコの怪物「クラーケン」と呼ばれています。ワクチンや過去の感染で出来た免疫はすり抜ける能力が高く、研究ではヒトの細胞にあるACE2に強く結合するため、感染力はオミクロンの1.6倍くらいと試算されています1)。

 まだ致死率等は分かっていないのですが、オミクロンと同等ではないかと言われています。ウイルスの変異として、年月と共に弱毒化はしてゆくのでしょうが、どんどん感染力が上昇すれば、それだけ、特に高齢者や基礎疾患がある人の死亡率は増えるものと思われます。

 またコロナ後遺症の心配は、若い人にも付き纏います。スコットランドの論文によると、3万1000人以上の新型コロナの有症状者の調査で、42%が完全に回復するまでに6~18カ月かかり、6%はその後も症状が残っているということが発表されています。またドイツの研究では3カ月以上経過した後に長期的な症状がある割合は約14%でした。

 コロナ後遺症は若い人でも起こり、働き盛りの人が働けなくなる可能性がある病態だと思います。ウイルスの持続感染や、ウイルスで老化細胞が増えてしまうことなどその原因が推測されていますがまだまだ分からないものになります。感染力の強い変異株で、再感染症例も増えてきます。対処できる薬もありません。後遺症が増えないことを願うばかりです。

 5類移行はおそらく正しい方向なのだとは思いますが、自己責任になりますので、コロナ死亡や後遺症に自分が関わらないように、今後ますます感染に注意して、日頃から免疫力を落とさない生活を心がけることが、必要な時代になるのだと思います。

 蒼野は食事、運動、睡眠の良いサイクルを回しながら、冷水シャワーや鼻うがい、腸活を心がけてゆこうと思っています! なりたくはないのでマスクは手放せないかなあ…..!

参考文献:
1)Enhanced transmissibility of XBB.1.5 is contributed by both strong ACE2 binding and antibody evasion. ;BioRxiv doi: https://doi.org/10.1101/2023.01.03.522427

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