コロナ頭痛の対処法!

2022/10/08

 今日はコロナで起こる頭痛について、今分かっていることを、論文や記事から調べてみました。もちろんはっきりした原因などが分かったわけではありませんが、ケースバイケースで、いくつかの可能性について書いてあったので、もしお悩みの方が居られたら、その解決のヒントになればと思います。

 コロナの発熱外来をしていると、丸がついている症状としては、発熱が一番多いですが、オミクロンになってからは、咽頭痛と頭痛がよくある症状です。軽い場合には、総合感冒薬や鎮痛剤が軽度の発熱を抑えてしまい、体温を上げることによる免疫反応を低下させてしまうことをお伝えして、可能であれば我慢するようお話ししています。蒼野はまず処方するのは漢方です。

 2022年5月に医学誌「Headache」に発表された総説論文によると、急性期の新型コロナ患者の約半数が頭痛を発症しており、約4人に1人は最初に現れた症状が頭痛でした。特に頭痛の既往歴がある人の47~80%は、新型コロナの頭痛は過去の頭痛とは異なり、突然、強烈な痛みに襲われる場合がある様です。

 元々片頭痛がある人は、頭痛外来を受診していれば、それなりの薬や対処法は持っているものですが、対処が間に合わないほど、急にひどい頭痛に襲われるのです。ニューヨーク大学の神経学者によると、COVID19の急性期の頭痛は3つのタイプがあるそうです。「片頭痛類似型」「緊張型」「持続性連日性」の3つがみられるとのことです。

 片頭痛タイプは全体の半分以下、片頭痛患者が日本では840万人と少数派ですので、遺伝や体質が関係している頭痛は、感染者数から考えると少なくて当たり前です。ですが酷い頭痛になりやすい為、日頃から辛い頭痛がある人は、普通の鎮痛剤のみでやり過ごすのではなく、頭痛外来を受診して、きちんと片頭痛の診断と対処法や薬を用意しておく方が楽だと思います。

 蒼野も頭痛を多くみてきたので、風邪や副鼻腔炎などの感染に伴う片頭痛の悪化は、多く経験しました。感染により体内に炎症が起こることで、片頭痛発作が惹起されてしまうのです。しかしコロナの場合には、強烈な痛みに襲われることも多く、コロナ後にも片頭痛のコントロールが難しくなったり、頻度が増えたりする場合さえある様です。

 一番多いのは緊張型頭痛に似た頭痛の様です。元々頭痛の頻度的にも、一番多い頭痛なので納得できます。頭の両側または前頭部に「頭全体がゴムバンドで締め付けられているような」感覚がある頭痛が典型的です。感染の影響もあるとは思いますが、ずっと臥床することによる凝りや、休まなければいけないストレス、自宅待機でのスマホの見過ぎなどの影響も考えられそうです。

 3つ目の持続性連日性頭痛は少し厄介です。頭痛の教科書でも、「新規発症持続性連日性頭痛」の項目が記載されており、ウイルス感染、医療処置、強いストレスなどが引き金となって長期間続く頭痛によく似ています。蒼野の印象では、一緒にメンタルが悪くなっている人が多く、コロナ後遺症の一つにも挙げられる症状になります。

 「新規発症持続性連日性頭痛」の診断は症状が90日間継続してからなので、急性期に診断はできませんが、両側の圧迫感、締め付け感が続き、運動で増悪しない頭痛で、それまでに頭痛の既往が無いものになります。鎮痛薬の連日使用によって、薬剤乱用頭痛を併発することもあり、生活習慣の改善や漢方薬などの治療が望まれます。

 新型コロナ頭痛を引き起こす原因については、まだ研究は途上です。ウイルス性髄膜炎や脳炎の可能性はほとんど髄液検査が行われていないため不明です。剖検例では前頭葉の血管内皮細胞や神経細胞内にウイルス粒子が認められた例があり、血流に乗って脳内へ移行している可能性があります。

 他のウイルス感染でも頭痛はありふれた症状であり、コロナウイルスが結合しやすいACE2受容体は髄膜の血管内皮細胞に高い発現が認められることから、感染による炎症亢進状態によって、髄膜が直接感作(痛みに鋭敏になる)され、局所の炎症を起こし、三叉神経を刺激することが考えられます。他のコロナウイルス(SARS-CoV-2)ではこの機序が感染による片頭痛に関与していることがわかっています。

 頭痛群は嗅覚や味覚が障害される確率が有意に高く(P<0.0001)、鼻腔にある三叉神経に直接ウイルスが浸潤したり、体内炎症やサイトカインが三叉神経を刺激することで、頭痛につながっているのではないかとも考えられています。

 その際に片頭痛で重要な役割を果たすCGRPという物質が関与している可能性が高く、特に片頭痛様のコロナ頭痛では、片頭痛の新薬であるCGRP抗体薬が炎症を抑える可能性があるとされていますが、現時点では仮説段階で、積極的な使用は勧められていません。

 コロナ頭痛の治療ですが、頭痛クリニックの経験では、酷い頭痛発作にはとにかく炎症を著明に抑える副腎皮質ステロイド剤を静注すると、何とかなる人は多かったのですが、まだ感染が残る状態では、免疫力が下がるため、早い時期にはお勧めはできません。あくまで耐えられない時の緊急避難です。

 急性期の頭痛に関しては、拍動性なら冷やし、締め付ける頭痛ならば温めるなどで紛らわせるのは良い方法だと思います。神経が関与している頭痛では、通常の痛み止めであるNSAIDsがあまり効かないことが多いです。報告では完全寛解は25%、少しでもマシな場合を合わせても50%程度とのことです。無効な場合にはガバペンなどの神経痛の薬も使ったりします。

 そしてコロナ後遺症として長く残る頭痛に関しては、ウイルスの直接の影響の時期は過ぎており、感染による三叉神経血管系の感作、または神経炎症や低酸素性損傷に起因する可能性が高いのではないかと疑われています。2021年の2万8000人以上を対象とした35件の研究の分析では、頭痛が60日後も続いていた人は16.5%、90日後は10.6%、180日後以降も続いていた人は8.4%います。

 他に疲労や呼吸困難なども残っている様なら、生活自体も感染前とは激変している可能性があり、ストレスやメンタルの悪化、動けないことによる血流の悪化などが、頭痛の原因に加わってきている可能性が高いです。痛み止めを飲み続けるのではなく、後遺症外来を訪れて、漢方や生活療法も加える必要があります。西洋薬では片頭痛予防に使われる抗うつ薬、アミトリプチリンに反応する場合がある様です。

 生活としては、スマホ時間は短縮し、夜入浴後には見ない、ベッドに持って入らないのは重要です。寝る時間と起きる時間を一定にして、自律神経を整えます。またアルコールは厳禁です。漢方は1発で効く場合もありますがそうでない場合も結構あるため、気長に続けてゆくことが重要です。

 漢方に関しては、釣藤散、川芎茶調散、葛根湯、五苓散、呉茱萸湯などが頭痛に効くと言われていますが、証に合わせて使う必要があり、また組み合わせたりもするので、漢方医や後遺症外来で相談するのがベターだと考えます。

 2022年のコロナ頭痛についての研究では、ワクチンの有無に関するものでは、頭痛を含めた様々な症状に関しても、ワクチン接種済みあるいは追加接種まで受けた人たちのほうが軽いことが多いと報告されています。最近はウィズコロナの風潮が日に日に強くなっていおり、嬉しくもありますが、感染は体調を崩すきっかけになり得るので、出来る予防策は続けてゆきましょう!

 コロナ頭痛は様々な頭痛が、入り混じっている印象があります。今後もっと病因解明が進んでゆくことを期待します。悩まされないためには感染しないのが一番です。出来るだけ免疫力を上げる生活に近づけてゆきましょう。蒼野も毎日の生活を気をつけたいと思います!

参照記事: 新型コロナの頭痛は何が違うのか、約2割は3カ月続くという報告もhttps://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/100400453/?P=1

COVID-19における頭痛の管理
https://www.neurodiem.jp/news/managing-headache-in-the-covid-19-setting-4N9wVknOU6Rc7PrDrUNqBc

参照論文: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と頭痛  臨床神経学 2020.60(9) p. 589-596

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