EPA/AA比

2021/12/11

昨日、友人と話していて脂肪酸の話題になったときに、自分でもちゃんと頭の中で分類して理解できていないことに気付いたので、今日は脂肪酸について、まとめてみたいと思います。

脂肪酸の分類は次のとおりです。

飽和脂肪酸 常温で固体  
   ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など
  (動物性脂肪、パーム油、ココナッツオイル、MCTオイル、ラード、バターなど) 
   
不飽和脂肪酸 常温で液体
 オメガ3脂肪酸(必須脂肪酸であり、多価不飽和脂肪酸でもあります)
    αーリノレン酸(エゴマ油、亜麻仁油)、EPA、DHA(青魚)

 オメガ6脂肪酸(必須脂肪酸であり、多価不飽和脂肪酸でもあります)
    リノール酸(コーン油、大豆油、綿実油、グレープシードオイル)
    アラキドン酸(卵、豚肉、レバー、牛肉、リノール酸からも作られる)

 オメガ9脂肪酸(非必須脂肪酸であり、一価不飽和脂肪酸)
    オレイン酸(オリーブオイル、紅花油、なたね油、落花生油)

に分けられます。つまり不飽和脂肪酸は、身体の中で作れない必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸と、オメガ6脂肪酸、身体の中で作ることができる脂肪酸であるオメガ9脂肪酸に分類されます。

 とかとかというのは、分子の構造上、メチル基から何番目の部位に炭素の二重結合があるのかを示しており、加熱によって、二重結合の所が酸化しやすいため、二重結合の数が多い(多価)と、酸化しやすい油である、と考えられます。ですから不飽和脂肪酸は熱を加えずに摂取する方が良い油になります。

 人間が食べ物から摂取しなければいけない脂肪酸は、体の中で作れない、必須脂肪酸です。つまりオメガ3とオメガ6なのです。そこで重要なのはバランスです。それぞれが、身体の中で、真反対の働きをしているからです。

 オメガ3は、白血球の働きを抑制して炎症を抑え、オメガ6は白血球を活性化して、炎症を起こし、病原菌と戦う作用があります。上の食材を見て分かると思うのですが、現代の食生活では、エゴマ油や亜麻仁油といった特殊な油や青魚の摂取が少なく、揚げ物や肉、卵の摂取が多くなっています。

 理想的な割合は 1 : 1(オメガ3 : オメガ6)で摂取することです。しかし、現実では、多くの日本人の摂取割合は、オメガ6の過剰摂取の状態になっています。このことから、身体の中では、白血球は活性化し、常に炎症が起こり続けているのです。

 観察研究でも、オメガ6の摂取が増えると、白血球の数が大きく増えています。過剰なオメガ6が、白血球を暴走させ、さらには病原菌のような外敵ではなく、血管など自分の細胞も攻撃してしまっている可能性があるのです。

 こうした状態が続くと、次第に血管の壁が傷つき、そこにコレステロールなどが溜まって動脈硬化を引き起こすことにつながると考えられています。また、アレルギー反応を悪化させたり、過酸化脂質を増加させること、などが指摘されています。

 身体の中のこうした状態を把握する目的で、提出される血液検査が、EPA/AA(アラキドン酸)比です。これは動脈硬化性疾患の存在が疑われる人であれば、健康保険を適応して検査をする事が可能です。具体的には、糖尿病や脂質異常症がある人は、保険での測定が可能です。

 蒼野の経験では、比較的高額な検査でもあり、あまり沢山測定していると、保険審査が通らないことも多かったため、自由には測定できませんでした。しかし食生活を本気で見直したい人には、有用な値となりますので、自由診療(自費診療)でも測定する意義のある検査であると思います。

 世界で見ると、酪農が盛んな国であり、牛肉の生産と消費量が多いデンマークでは、動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞が、ヨーロッパの中でも比較的高い発症率を示しています。

 一方で、北極圏という極寒の地、心筋梗塞や脳卒中の発症には最も不利な気候の中で暮らすイヌイット(エスキモー)の人達は、ほとんど脳梗塞や心筋梗塞にはなりません。これはアザラシを主食とするために、EPAを沢山摂取しているからだと言われています。

 EPA/AA比は、デンマークでは0.25程度、イヌイットは8.0程度と大きな差があります。英国やアメリカでは0.1、南イタリアでは0.3、一方日本では、65才以上では0.68、45~64才では0.51、45才未満では0.28と、年代により差のあることが報告されています。

 九州大学の久山町研究によれば、EPA/AA比が、0.5くらいまでは心臓病での死亡リスクが低く抑えられていますが、それより低くなると、急激に死亡リスクが高まることが示唆されています。また最近ではEPA/AA比が低いと発がんのリスクが高くなることも判明しています。

 人の食生活は様々です。もちろん昔に比べて、魚の消費は減っている傾向にありますが、日本人は欧米並みに肉を食べている訳ではない様です。細身の若い女性でも、EPA/AA比はかなり低くなっている人も、目にすることがあるのは、どうしてでしょうか?

 忙しい現代人がよく利用するものとして、コンビニフーズが挙げられます。人類はカロリーの高い、脂肪と糖の中毒性には弱い生物です。美味しく感じる、よく売れているものには秘密があります。時間が経つと固くなる、手作りのおにぎりを嫌う若者は多くなっています。

 サンドイッチは、パン自体や具に油を含みます。また、コンビニのおにぎりは、ご飯が製造機械に付着しない様に油が炊き込まれています。この油は、ご飯を長時間やわらかく保つ働きもします。カップラーメンや、スナック、お菓子も多くの油を含みます。一つ一つに含まれる油は少量でも、若年者のEPA/AA比を下げている原因の一つとして、可能性があるように思えてなりません(私見です)。

 動脈硬化疾患に罹った最初の人類は、3500年ほど前の、古代エジプトの王族だった様です。このころ、家畜の穀物肥育や、ごま油などの食用油作りが始まりました。今でいうフォアグラのようなものも作られていた様です。ミイラの大規模調査から、脂のたっぷりのった、家畜の肉などを食べていたと思われる王族から、重症の動脈硬化の跡が発見されているのです。

 人類が美味しく感じるものは、今も昔も変わりません。飽食の時代である、現代の私たちの食生活は、美味しいと感じるように脂肪と糖が豊富に含まれた加工食品に囲まれており、古代エジプトの王族のようなものになってきているのではないでしょうか? 

 将来の医療費を考えれば、多少高くても、新鮮な食材を、美味しく調理して、毎日食べたいと思っている蒼野でした。