揚げ物との付き合い方!

2023/07/20

 しばらく難しい話題が多かったので、今日は食べ物の話です。そろそろビアガーデンの季節ですね。ビアガーデンで蒼野が連想するのは、美味しい生ビールと鶏の唐揚げ+枝豆でしょうか?揚げ物は蒼野も大好きなのですが、健康の話題から言うと、食べる頻度は抑えたい調理法です。今日はその理由について復習してみましょう。

 日本人の多くが揚げ物が食べれるようになったのはつい最近のことです。始まりは16世紀末、安土桃山時代に、ポルトガルから天ぷらという調理法が伝えられたというのが、通説になっています。天ぷらは徳川家康の大好物だったそうですが、油は貴重な物であり、庶民が食べれるようになったのは江戸時代後期です。つまり日本での揚げ物の歴史は150~200年ほどしかありません。

 ですから遺伝的に油ものの消化が苦手な人も多いのです。一方地中海に面した国々では6000年近く前から、油の豊富なオリーブを利用してきました。進化の過程で油を消化できる能力は高まったのです。人種で比べると、日本人は油の消化能力が相対的に低いと言えます。油は膵臓が分泌するリパーゼによって分解されます。

 油ものの摂取が頻繁である人は、膵臓を酷使することとなり、これに飲酒も加わると、膵炎を起こす可能性が高まります。油を食べて、背中にまで広がる上腹部痛が出て、横になると増悪するような人は膵炎が疑われます。嘔気や嘔吐、発熱や、便に油が混じって悪臭を放つような場合には早めに消化器内科で相談しましょう。ビアガーデンで唐揚げを食べすぎてはいけません!

 揚げ物が健康に影響しやすい理由は二つあります。一つ目のリスクはカロリーが高くなることです。飢餓の時代なら有利で素晴らしい食べ物ですが、飽食の現代では、カロリー過多は様々な病気の原因になります。じゃがいものカロリーは100gで約93kcalですが、揚げると312kcalにアップします。脂肪の量も0.13gが15gになるのです。ポテトフライも好きな人は多いですよね! やはり太りやすい食べ物であることは疑いようがありません。

 二つ目のリスクは揚げる事によって生じてくる、体に悪い成分です。常温で液体の油は不飽和脂肪酸です。揚げ物に使う油は通常、綿実油やコーン油、ひまわり油やサフラワー油、キャノーラ油などの酸化しやすい油なのです。酸化した油=過酸化脂質を吸収すると、体内での活性酸素の発生が多くなり、様々な臓器や血管や細胞が酸化しやすくなります。

 活性酸素は細胞内の遺伝子を壊し、ガンができやすくもなります。体はそれに対抗して身体が持つ抗酸化物質を動員します。代表的なものはSOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)です。大量の揚げ物はこのSODを大量に消費するため、必要な全身の細胞の酸化防止に対応しきれなくなることで、老化が促進されてしまうのです。

 また揚げた食品では、いわゆるメイラード反応が起こり、タンパク質に糖が結合して、終末糖化産物(AGEs)を作ります。AGEsの摂取は体内の炎症を促進し、腸にリーキーガットを起こします。インスリン抵抗性を促進することから、糖尿病リスクを上げると同時に、血管病のリスクを増加させます。酸化も促進し、体内の老化を進める食べ物なのです。

 糖化反応でできる物質に、アクリルアミドが挙げられます。神経毒性や、発がん性があることが動物実験などで確認されており、できれば摂取は少なくしたい物質です。アスパラギン酸というアミノ酸と糖類が高温(120℃以上)で調理されると出来るため、多くの食べ物に含まれています。タバコの煙にも含まれているものです。

 アクリルアミドが多く含まれる食べ物としては、ポテトチップス、かりんとう、フライドポテト、ビスケット、クッキー、とうもろこし系スナック菓子、食パンなどになります、家庭料理では揚げ物や炒め物、オーブン料理には、少なからず含まれているものになります。全てを排除するのは難しく、料理に含まれるものは仕方ないと思いますが、お菓子やスナックなどは控えたいところです。

 また揚げることで、トランス脂肪酸の割合も増えてしまいます。身体に悪い脂の代表のように言われるトランス脂肪酸ですが、自然界には少量しか存在しない脂です。HDLを減らし、LDLを増加させるため、動脈硬化を促進します。トランス脂肪酸もインスリンの抵抗性を増加させ、脂肪蓄積、体重増加を促します。体内の炎症を増加させ、糖尿病リスクも増加させるのです。

 でも揚げ物は美味しいんですよね! どうせ食べるならなるべく健康リスクを高めないように食べたいものです。当たり前ですが、まず基本になるのは食べ過ぎない事です。月に1~2回なら、と書いてある記事が多いです。中には週1回というのもあるので、蒼野はこっちで行きたいです。基本は家で揚げたものをすぐに食べるのが、美味しい上に安全です。

 外食産業の揚げ物は、コストの面で、油が何度も使い回されています。油は「加熱」と「光」と「酸素との接触時間」で酸化が進みます。何度も加熱され、放置された油はどんどん酸化して、我々の身体を酸化させる油に変化しています。もちろん含有するトランス脂肪酸やアクリルアミドも増えていくのです。家で1回きりで新しい油を使うのがベストです。

 また油の種類もこだわりましょう。多価不飽和脂肪酸が多い、普通の揚げ油よりも、酸化される部分が少ない一価不飽和脂肪酸の割合が高い、オリーブオイルやアボカドオイルで揚げるのは、過酸化脂質の摂取を減らす方法です。蒼野家ではコストコのオリーブオイルを使って、無水鍋で少量の油で揚げています。少量ですから、一回毎に廃棄するようにしています。

 スペインのオリーブオイルの揚げ物摂取の多い人と少ない人を比べた41438人の11年間のコホート研究では、心臓疾患の発症に差がなかったという報告も出ています1)。是非自宅での揚げ物にはオリーブオイルを使いましょう。揚げ物にはエクトラバージンよりもリファインドオリーブオイルの方が高温に強く、適している上、少し安いです。

 家で揚げたものは、悪い成分が少ないせいか、少々食べても(もちろん食べすぎないほうが良いのですが….)ウッときません。テイクアウトの唐揚げやスーパーのお惣菜の揚げ物も食べる機会もありますが、家の揚げ物に慣れると、美味しくないし、たくさん食べると気持ちが悪くなるのは事実です。アボカドオイルは、さらに酸化しにくいらしいのですが、高すぎて揚げ物に使ったことはありません。

 揚げ物の付け合わせとしては、たっぷりの抗酸化物質が必要です。緑黄色野菜や果物などを一緒に摂るようにしましょう。全粒穀物や豆、ナッツなども揚げ物による酸化や炎症を抑えてくれます。揚げ物は腸内フローラのバランスも悪くするため、食物繊維もたっぷり摂りましょう。揚げ物にレモンを絞ったり、酢の物を一緒に食べたりすると、胃のPH値を下げ、リパーゼの活性を抑制するため脂肪の吸収が少し抑制されるので、それも利用したいですね。

 蒼野は夕食の時は基本的に生レモンを絞った炭酸水か、リンゴ酢を炭酸で割ったものを飲んでいます。食事との相性、特に揚げ物との相性もピッタリです。リンゴ酢に含まれる酢酸は、血糖値の上昇も緩やかにし、脂肪吸収も抑えられるので、健康的な飲み物だと思います。大幅に抑制するわけではないので過信は禁物ですが、お酒と揚げ物だと、ダブルで肝臓を痛めつけてしまうので、お酒を減らすためにも、良い飲み物だと自画自賛しております。

 まずはお菓子やスナックから減らしてゆきましょう。外食やコンビニ、ファーストフードや惣菜の揚げ物もなるべく避けて欲しいです。トランス脂肪酸で揚げてあるものさえあり、時間が経って酸化しています。揚げ物は、時々家で、揚げたてを楽しみたいものです。

 ということで、ビアガーデンの宣伝は、なるべく見ないようにしようと思う蒼野でした!

参考文献:
1)Consumption of fried foods and risk of coronary heart disease: Spanish cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study. ; BMJ 2012; 344 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.e363

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。