頭痛のケトジェニックダイエット

2022/03/14

 今日は、12歳から頭痛に悩まされていた、アメリカのジャーナリストの30代女性が、頭痛の改善のために、ケトジェニックダイエットに挑戦したところ、今まであらゆる市販薬、処方薬、頭痛ダイアリーや、食事療法を試し、医師や理学療法士、カイロプラクター、鍼灸師などにかかっても、改善しなかった慢性片頭痛が、劇的に減少したという記事を見つけたので、それについて、私見も交えて書いてみたいと思います。

 彼女の頭痛は、30代半ばには毎日痛むようになっていましたが、忙しく過ごすことで、終わりのない痛みになんとか耐えていたそうです。そんななか、新型コロナで自宅待機を余儀なくされ、気を紛らわすこともできなくなり、2020年には、どんな薬も、ほとんど効かない状態になっていました。

 ケトジェニックダイエットは、1920年代、抗てんかん薬がなかった頃、てんかん治療に応用されていて、抗てんかん薬が発明されるまで、数十年にわたり広く用いられていたそうです。てんかんは脳内で脳波が乱れて、異常脳波が広がることにより発症します。ケトジェニックダイエット中は、ケトン体を脳のエネルギーとして使うため、安定して供給できる状態が続き、脳波が安定しやすくなるようです。

 片頭痛もただの痛みではなく、脳内でさまざまな反応や、神経興奮が起こり、脳波が変動することが頭痛につながる神経疾患です。脳内で反応が起こることで、嘔吐やめまい、光や音に対する過敏症、発作が起こる前に閃光やジグザグの光が見えたり(閃輝暗点)、体の片側がチクチクする(アロディニア)などの前兆症状(約25~30%)がある人もいます。鼻水や涙が出たり、言葉が出にくくなったり、片側の脱力が起こったりすることもあります。

 片頭痛は、患者を取り巻くさまざまな変化が誘因となって、脳内に反応が起こり、その結果頭部血管が拡張することで、ズッキンズッキン痛む疾患なのです。頭痛が起こると、脳内に脳に霧がかかったようになり、集中力が失われ、簡単な仕事でさえ不可能な作業に感じられるなど、仕事の効率が著明に低下してしまいます。

 『ザ・マイグレイン・ダイエット』(片頭痛ダイエット)を書いた栄養士、デニスポッターさんによると、頭痛に有効なのは、ケトジェニックダイエットで、炭水化物は少なめに、脂肪はたっぷり、たんぱく質は適度に摂取することを勧めています。

 炭水化物量を減らすと、身体の中の糖質やグリコーゲンが使われて枯渇し、体脂肪がエネルギーとして使われる状態となります。血糖ではなく、体脂肪から作られるケトン体がエネルギーとして使われるようになるのです。この状態では、脳もケトン体をエネルギーとして使うようになります。

 ケトジェニックダイエットは、1940年代には一旦すたれていましたが、1994年、ハリウッドの映画監督である、ジム・アブラハムが息子のチャーリーのてんかん治療に行ったところ、わずか1ヶ月で完治。著明な効果があったことから、チャーリー財団を設立して、ケトジェニック治療の啓蒙を行うようになり、復活しました。

 またケトン体による、脳内の安定、発作抑制の機序は明らかにはなっていないのですが、通常はずっと薬を飲み続けないといけないような症例にも著明な効果が報告されています。例えば生後5ヶ月で、点頭てんかん発作(通常は難治性)を発症した女の子は、ケトン食で2日後には発作が消失し、2ヶ月後には脳波が正常化、8ヶ月後にケトン食を中止し、4歳になった今は、後遺症もなくすくすくと成長しています。

 ケトン食の有効性については、血糖の上下がないため、シュガーバーニングの時のような、食事の間に、エネルギー供給が低下する時間が無いことが挙げられています。体脂肪や食事からのケトン体の供給は安定しており、脳のエネルギー利用能力が向上するのではないかと言われています。

 また、食後の血糖スパイクで、反応性に低血糖になると、血糖を上げるためにストレスホルモンが分泌されることも、脳に大きく影響が出る要因です。片頭痛も脳内の変化が引き金になるため、血糖値の安定と、ケトン体によるエネルギー供給、ストレスホルモンの安定が片頭痛の予防に有用であると考えられています。ケトン体自体にも、ミトコンドリア機能を改善し、体内の炎症を軽減する作用を有していることも予防効果に関与しています。

 イタリアの研究では、片頭痛の肥満患者のダイエットを、ケトジェニックとローファットの2グループに分けて行ったところ、ケトジェニックで低カロリーの食事を食べたグループは、片頭痛が起こる回数が劇的に減少していました。

 アメリカの30代女性は、具体的には食事から炭水化物と砂糖を排除し、自然食品を食べる(加工食品を避ける)、より多くの脂肪と野菜を摂取する、ベリー類のような低糖の果物を選ぶ、などを行いました。1ヶ月目の頭痛はあまり変化がありませんでしたが、2ヶ月目からどんどん軽くなり、3ヶ月目には、毎日起こっていた頭痛が、数日連続して起こらない日ができてきました。

 最初の1週間は、シュガーバーニングからファットバーニングへの切り替えがうまくいかず、ケトフル(ケト風邪)で苦しみましたが、その後は体調も良くなり、今までのどの薬物治療よりも、有効だと思うとのことでした。コロナで自宅待機する時期だったからこそ、きちんと食材もコントロールできたようです。

 しかし2021年春にワクチンを打ったあと、友人や家族とレストランで食事をする機会が増え、周りの人がパスタを食べて、さらにデザートまで注文しているのに、自分だけハンバーガーを注文して、しかもバンズ抜きで食べるのは難しいという事態となりました。夏からケトジェニックダイエットをやめてしまったところ、以前と同様の毎日の片頭痛が戻ってきたようです。

 結局、よく考えて、痛みのない日々が長期的に続くというメリットは、パンやケーキを食べるという一時的な喜びに比べて大いに勝ることが分かり、ケトジェニックダイエットを再開することになったという結論でした。

 ケトジェニックダイエットは、脳疾患だけではなく、糖化や身体の慢性炎症を抑えてくれることや、脂肪が常に燃える状態となるので、体重のキープが簡単で、減量にもとても有効です。過去ブログの「脂で痩せる!?」や「ファットアダプト」のところでも書きましたが、農耕以前の人類が元々摂っていた食事に近いものですので、健康長寿にもとても有効だと、蒼野は考えています。

 離乳食が始まったばかりの赤ちゃんが、何を好むか、様々な食材を用意して実験したところ、最も赤ちゃんが好んだものは、脳と骨髄だったそうです。元々人類は2本足になったことで、肉食動物に食べられた後の、動物の骨や頭蓋骨を拾って帰ることができるようになり、石で割って中の脳や骨髄を食べていたという説があります。

 確かにいつも狩りで獲物が獲れたわけではなかった人類が、生き残るためには、骨を拾って帰る方が簡単です。元々ケトジェニックな食事を摂っていたからこそ、さまざまな病気にも有効なのかもしれません!

 蒼野は元々脂肪大好き人間なので、ケトジェニックダイエットは苦痛ではありません。片頭痛は持っていませんが、体重コントロールと健康長寿のために、これからも、16時間ファスティングと、ケトジェニックをメインとし、時々炭水化物や甘いもので、脳を満足させる食事を続けてゆきたいと思っています。

最近は少しのイチゴに、エリスリトールを入れてホイップした沢山の生クリームで食べるのにハマっている蒼野でした!

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