プロテインのトリセツ!

2021/12/07

 今日は、ボディメイクされている方は、愛用されていると思われるプロテインについて、少し書いてみたいと思います。

 プロテインには、牛乳を材料とするホエイプロテイン・カゼインプロテイン、大豆を原料とするソイプロテイン、えんどう豆から作られたピープロテインがあります。人体には、カゼインプロテインの中のα-S1カゼインが、炎症やアレルギーの原因になると言われています。知っている皆さんは、気になるのではないかと思います。

 まず一つ一つ解説してみましょう。ホエイプロテインは、牛乳に含まれるタンパク質の一種です。牛乳のプロテインの2割がホエイプロテインで、8割がカゼインプロテインです。ヨーグルトの上澄みにできる液体がホエイ(乳清)で、それに含まれるタンパク質がホエイプロテインです。

 ホエイプロテインには、筋肉成分の多くを占めるアミノ酸が含まれており、筋肉修復効果が高い成分になります。飲みやすい味で、体内への吸収速度はスムーズ、胃腸にもたれにくいというメリットがあります。ホエイプロテインは吸収がスムーズであることから、トレーニング直後の補給に広く使われています。ホエイプロテインには、αS1カゼインはほとんど含まれていない様ですので、大きな危険はなさそうです。

 一方、カゼインプロテインは、不溶性で固まりやすく、体への吸収速度がゆっくりであることが特徴です。ダイエット時の間食や運動をしない日のタンパク質補給、また就寝時などに、満腹感の持続が期待できることから、使われている様です。もちろんαS1カゼインが含まれていますし、腸での吸収が遅いことで、腐敗しやすく、リーキーガット⇨炎症を起こしやすいプロテインになりますので、できれば避けた方が良いと考えます。

 ソイプロテインは、大豆のタンパク質部分だけを、粉末にしたものです。タンパク質の比率を高め、水分や糖質、脂肪を減らし植物性タンパク質を効果的に摂取できるようになっています。大豆に含まれるイソフラボンや食物繊維の効果で皮膚や骨の強化、血流改善、腸内環境の改善が期待できます。

 大豆イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをしてくれるので、肌のハリを保ったり、女性らしい体形を作りやすいため、女性向きのプロテインとも言われています。水に溶けにくいため、粉っぽさが残りやすいことや、原料が遺伝子組み換え大豆の場合には、残留農薬が心配です。ダイエット用としては、腹持ちも良く、優れたプロテインです。

 最後がピープロテインです。最近少しずつ知られてきたエンドウ豆から抽出されたプロテインです。 大豆や牛乳アレルギーがあっても摂取可能です。他のプロテインと比較すると、プロテインスコアが0.8~0.9程度で、筋肉を作るのに必要とするアミノ酸を、全種類含んでいないので、他の食材も合わせて摂取する必要があります。他の原料に比べて、地球環境に優しいプロテインとしても、注目されています。

 プロテインを使う上で、気をつけなければいけないのは、やはり量の問題です。健康を保ちながら、身体を作ってゆく上で、食べ物のバランスはとても大切です。筋肉をつけたいあまりに、過剰摂取すると、様々な健康上の問題を引き起こす可能性があります。

 まず、一度に人体が吸収できるプロテイン量は、25gくらいが適量です。食事で摂取する量も、合わせて考える必要があります。摂り過ぎると、タンパク質でもインスリンは誘導されるので、余分なカロリーが脂肪に変わり、体重が増える可能性があります。こまめな摂取が勧められています。

 過剰摂取で使われなかったタンパク質は分解されて、窒素化合物となり、最終的にはアンモニアに代謝されて排出されます。この過程で、肝臓にも腎臓にも負担がかかるのです。1日の摂取量は最大でも(体重×2)g以下に抑えましょう。普通の運動であれば(体重×1.5)g程度が安全です。国の定めた1日の推奨摂取量は、男性で60グラム、女性で50グラムとされています。過剰摂取すると、内臓疲労で健康を害する可能性があります。

 食物繊維を増やさずに、プロテインの比重が大きくなると、腸内の悪玉菌が増えてしまい、腸内で腐敗が起こり、猛毒のアミン類が発生して、炎症が起こり、活性酸素が発生して、全身に波及します。おならも臭いが強くなります。肉を食べ過ぎた翌日のおならは臭いますよね。

 これは便秘や下痢の原因になることもあります。老化の進行や、様々な慢性病の原因にもなってしまうということです。また、ホエイやカゼインプロテインは動物性タンパク質ですので、その過剰摂取で、尿路結石の原因にもなりやすいです。

 最後に加齢による影響を、よく考えて摂取しましょう。腎臓の機能は、特殊な病気が無くても、年々少なくとも1%ずつ低下していきます。これに生活習慣病の高血圧や糖尿病が加われば、年間2%から、場合によっては5%以上、下がることもあります。

 腎機能が悪い人は、ある程度はタンパク質を制限しなければいけません。腎機能の値としては、血清クレアチニン値が一般的ですが、血清クレアチニン値が上昇してきて腎機能低下が分かるのは、かなり末期になってからなのです。特に高齢になると、腎機能低下に気づいておらず、プロテインを飲み出したことで、腎臓が悪くなるケースもある様です。これには十分に注意が必要です。

 身体の中の細胞は、筋肉も含め毎日、新陳代謝で作り替えられています。1日にだいたい400グラムのタンパク質が壊され、400グラムが新しくつくられているのです。その材料は、基本的には、壊されたタンパク質から得られるアミノ酸です。

 飢餓の歴史を生きてきた人類の体には、元々アミノ酸を大量に貯蔵しておくシステムが備わっています。具体的には、体の細胞の中、血液の中、細胞の外の細胞外液などに、約100gのアミノ酸がいつでも貯蔵されています。

 またオートファジーによって、毎日240gのタンパク質を作ることができるのです。タンパク摂取がない時期があったとしても、しばらくは筋肉を落とさず、生存の可能性を下げることなく、生き続けることができるシステムがあるのです。

 タンパク質は重要な栄養素ですから、必要量を食事から摂ることは大事です。食事からきちんと肉、魚、卵、大豆、豆などからタンパク質を摂っていれば、問題はありませんし、筋肉は運動すれば作られてゆきます。運動の度にプロテインを摂取することでのメリットは、ボディビルなどに、限られているかもしれません。イェール大学で行われた実験で、5カ月間にわたり、アスリートに1日のタンパク質を55グラムに制限させたところ、筋力は逆に35%も増加したそうです。

 プロテインを飲んで、運動するのは、とても健康的なイメージがありますが、プロテインは、人工的に、自然界の中には無いくらい、アミノ酸が凝縮された、ある意味、不自然な食べ物なのです。くれぐれも摂り過ぎには注意する必要があります。

 健康長寿という観点からすれば、食事で、十分なタンパク質が摂れない時に、時々使うものと考えるのが良さそうです。蒼野としては、食べ物から摂るのがベストで、もし使うのであれば、カゼイン以外のプロテインをお勧めします。

参考書籍: 医者が教える食事術 最強の教科書    牧田 善二

医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68 [ 牧田 善二 ]
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