マスクを外す前に知っておいて欲しいこと!

2023/03/13

 ついに今日から、マスクの着用は、『個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断』が基本となりますね。ポストコロナの一つの象徴でもあり、みんなの表情が見れるというのは、コミュニケーションにとっても、情報量が増えて、円滑になる可能性があると思います。外しても皆様が安全であるのなら、蒼野もマスクをしないことには大賛成です。

 個人の判断といっても、どうやって判断したら良いかということについては、その基準が無いと判断できませんよね。そこで今日はマスク着用についての論文を幾つか紹介したいと思います。まずマスクの感染予防効果です。

 大きなものとしては、呼吸器感染症に対するマスクの論文があります。呼吸器ウイルス感染に対する過去の21の研究結果をメタ解析したものでは、ウイルス性呼吸器感染症に対して、マスクをしている事によって、つけていない人と比べると、感染は全体で65%減少しています。インフルエンザでは45%、SARSでは74%、新型コロナに対しては、なんと96%感染を減らす効果が認められています1)。パンデミックの最初にマスクが不足して、高騰したのも納得できます。

 新型コロナに限定した論文でも、マスクの使用は、他の感染予防策とともに、COVID-19の伝播を防ぐ上で効果的な手段であることが示されています。公衆のマスク着用は、集団レベルでの伝播の低減につながり、感染者自身がマスクを着用することで、伝播を減らす効果があることが強調されています2)。

 逆に集団生活で、マスク着用を撤廃するとどうなったかという論文もあります。2022年2月時点で、米国のマサチューセッツ州において、公立学校におけるマスク着用義務が撤廃され、そのまま撤廃した学区と、着用を続けた学区に分かれました。COVID-19患者数の推移を比較したところ、マスクをしない学区では、患者数に有意な増加が見られたため、マスク着用は対面教育の維持にも重要であると結論づけられました3)。

 コロナ禍では、みんながマスクを着けることで、感染をある程度防ぐ効果があったことは間違いなさそうです。今後は時間が経つにつれて、マスクを外す人が増えてゆくことが予想されます。例えば混雑した電車や地下鉄では、皆様はどうされますでしょうか? 会話がなくスマホを見ているだけであれば感染リスクは高くなさそうです。

 しかし感染した人がマスクをせずに咳をしたり、大声で喋ったりすれば、周囲の人がマスクをしていても、予防効果は限定的になってしまいます。マスクをするかしないかで考えるのではなく、どういう場合には必要で、どういう場合にはしなくても良いのかを、判断することが重要なのだと思います。

 ワクチンも普及し、変異株の弱毒化もあって、COVID-19患者の重症化率や死亡率は、パンデミックの最初に比べると、相当減少しています。しかし、高齢者の死亡率に関しては、49歳までが0.1%未満、64歳までが1%未満であるのに比べ、65~69歳で1.07%、70~79歳で1.65%、80~89歳で4.62%、90歳以上で5.64%とうなぎ登りに高くなります。

 これは明らかなコロナ死亡数での話です。国立感染症研究所のデータによれば、コロナ禍以前と比べると、コロナ禍になってからのデータでは、22の都道府県で超過死亡数が過去最大となっていました。コロナ及び呼吸器系疾患による死亡が多くなっている様です。直接死因にコロナと書かれていなくても、コロナ関連から悪くなって死亡した人も多いのではと、考えてしまいます。

 基礎疾患の重症度によるため、明確なデータはありませんが、基礎疾患があれば、若い人でも、死亡率は上昇すると考えられます。リスクが高い人に関しては、これからも感染予防対策は、引き続き行う方が安心ではないでしょうか? 高齢者に関しても、健康に自信がない人は、マスクを手放さない方が安全だと思います。

 そして若い人でも、受験や旅行や結婚式など、大事なイベントで、絶対に罹りたくないという時期には、マスクは外さないほうが良いと思います。また若い人で忘れてはならないのはコロナ後遺症です。重症になれば、長期間働けないため、人生が変わってしまいます。

 後遺症も残る場合と、残らない場合があるのですが、また確実なデータやリスク因子の同定はなされていません。報告されている論文では、高齢者、女性、肥満、COVID-19の重症化、過去に脳卒中の既往があること、発症後の症状の数が五つ以上あることがリスクに挙げられています4)。

 後遺症の原因についても、まだ確定はしておらず、ウイルスの長期残存や、免疫応答の異常(サイトカインストームなど)、感染後組織の微小血管の損傷や神経損傷、血栓形成や精神的ストレスから波及する病態、などが挙げられています。

 免疫応答の異常に関係する要素としては、腸内細菌叢の変化が疑われています。最新の論文で、重症コロナ感染症の患者106名と非感染者68人の腸内細菌を調べています。6ヶ月後に76%のコロナ感染症患者に後遺症(疲労、記憶障害、脱毛など)が残っていました。

 後遺症を呈した患者の腸内細菌叢では、腸内の炎症を引き起こす可能性が高い菌が多くなっており、炎症を抑え、腸を元気にする短鎖脂肪酸を産生する菌が少なくなっていました。また残存する病態と相関して、増加している炎症を起こす菌が増えていました。また健康な腸内細菌叢の維持を行う菌は逆走感があり、減っていることが確認されています5)。

 東大の研究でも、同じ様な傾向が見られました。こちらは軽症から重症までの感染患者を、発症7日以内、8~14日、15~21日、21日以降の4群に分類し,腸内細菌叢を遺伝子解析しました。発症直後から腸内細菌叢は徐々に変化し、症状発現後8~14日目に最大に変化しています。乳酸菌や短鎖脂肪酸を作る善玉細菌群が減り、炎症を起こす悪玉菌が増えて、炎症性サイトカインも増加が見られました(東京大学医科学研究所ページ)。

 これらは相関関係であり因果関係ではないため、確定的な結論ではありません。しかし蒼野の私見としては、元々の免疫が弱ければ、後遺症につながる確率も上がりそうな印象です。感染の予防に対しても、後遺症の予防に対しても、日頃からの良い腸の状態を保つことが、鍵になると思います。

 ですから、便秘や下痢が続いている様な人では、今からもコロナ感染を注意するべき人ではないかと感じています。マスクについても、より慎重になった方が良いと考えます。そんな方は、発酵食品、特にキムチや納豆、テンペ、大豆ヨーグルトやアーモンドミルクヨーグルトなどの植物性の発酵食品と、水溶性食物繊維を極力増やしてゆきましょう。

 水溶性食物繊維はオートミールやキノコ、キヌアやキャベツに含まれるβ-グルカン、オレンジやバナナなどに含まれるイヌリン、リンゴやベリー、柑橘に含まれるペクチン、ガムアラビックやグアーガムなどのサプリメントなどを、増やしてみてください。お通じが快調になれば安心です。

 コロナに罹らない、後遺症に陥らないためには、睡眠をしっかり取ることや、定期的に適度に運動すること、ストレスをやり過ごす事は基本です。免疫力に大きく影響するため、こちらも忘れずに行いながら、マスクを外しましょうね!

 もう一度まとめると、高齢者、基礎疾患のある人、女性、肥満、お腹の調子が良くない、などがいくつもある人は、感染の重症化や後遺症のリスクが懸念されますので、人混みではマスクするのが賢明かもしれませんね! 忙しくて体調が悪い時も気をつけましょう! 風邪症状がある場合には、周囲に広げないためにも、必ずマスクは付けてくださいね。

 最後に病院などに行くときは、リスクが高い人にうつさないよう、必ずマスクをお願いしたいと思います。医療機関では、今回のマスクの提言は関係ないなあ…と思っている蒼野でした。

参考文献:
1)Efficacy of face mask in preventing respiratory virus transmission: A systematic review and meta-analysis.; Travel Med Infect Dis. 2020 Jul-Aug;36:101751.

2)An evidence review of face masks against COVID-19. ; Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Jan 26;118(4):e2014564118.

3)Lifting Universal Masking in Schools – Covid-19 Incidence among Students and Staff. ; N Engl J Med. 2022 Nov 24;387(21):1935-1946.

4)Attributes and predictors of Long-COVID: analysis of COVID cases and their symptoms collected by the Covid Symptoms Study App. Nature Medicine 2020.
 https://doi.org/10.1101/2020.10.19.20214494

5)Gut microbiota dynamics in a prospective cohort of patients with post-acute COVID-19 syndrome. ; 2022 Mar;71(3):544-552. 

参照ページ:  
国立感染症研究所 ホームページ 超過死亡数 
https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/493-guidelines/11819-excess-mortality-all-230224.html

東京大学医科学研究所 ホームページ 新型コロナウイルス感染症患者における 腸内細菌叢変化と炎症性サイトカイン反応の相関解析
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00160.html

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