新型タバコは紙タバコより良いの?!

2022/10/13

 今日は蒼野の素朴な疑問解決シリーズです。脳ドックの仕事をしていて、生活改善のアドバイスをしていて思う事です。禁煙しようと思っていて、加熱式タバコに変えたと言われる方が一定数おられます。身体にとって良くないという話はよく聞きますが、紙タバコよりは良いのでしょう? と言われると、強くやめましょうと言えていない自分に気付きました。

 新型タバコについては2月に一度書いたのですが、もう少し研究も進んできている様ですので、今日はもう一度新型タバコについて書いてみようと思います。新型タバコとしては、タバコの葉を使っている加熱式タバコと、使用していない電子タバコがあります。蒼野は自分が吸わない(咳が出て吸えない?)ので混同していました。

 煙草の葉を、専用機器で加熱し、蒸気を発生させて吸い込む物が加熱式タバコです。火をつけて燃やさないということが、紙タバコとの違いです。一酸化炭素とタール成分の発生が抑えられます。タバコ葉に含ませたグリセリン類によって、蒸気を発生させるのが基本になります。2022年では国内販売されている加熱式タバコは14種類です。

 加熱温度などの違いで、紙巻きタバコに近い味のものから、匂いの少ないものまで各種ある様です。基本的には煙草の葉を使うタバコ製品ですので、タバコ税もかかっています。高温加熱するものは、タバコの葉を直接加熱するため、紙巻きタバコに近く、移行しやすい様です。低温加熱方式は、リキッドを加熱して霧状にし、タバコの葉を通すことで成分を吸い込むものになります。

 日本で販売されている加熱式タバコのパンフレットには、「健康懸念物質を99%オフ」「国際公衆衛生機関が優先する9つの有害性成分の量の低減率が約90%」「有害性物質約90%オフ」と書かれており、禁煙する必要があると言われた人が飛びつく文言が並んでいます。紙巻きタバコをやめて加熱式タバコにすると、健康的で病気にならなくなりそうだと思いませんか?

 しかしよく考えてみると「有害性物質が減っている」とは書いてあっても、「病気になるリスクが減る」とは書かれていないのです。2010年の米公衆衛生局の報告書には、タバコに安全なレベルはなく、受動喫煙も含めて、健康リスクを大幅に増加させるとしています。これはアルコールと同じですね!

 1日に2~3本しか吸わない人や、受動喫煙であっても心血管疾患のリスクは1日20本吸う人に近いリスクがあるとされています。有害成分90%減であったとしても、病気のリスクは十分の一にはならないということです。これは愛煙家の方が勘違いしやすいことになります。

 有害物質が入っていない、ただの水蒸気だから周囲に迷惑はかけないと思い込んでいる愛煙家の方は結構おられる様です。蒼野がゴルフを楽しんでいた時期に、アイコスが登場して、タバコを吸うのは自粛してくれていた一緒に回る紳士方が、「大丈夫だから」と口々に言いながら、ラウンドの間中近くで吸われるのに、匂いで気持ちが悪くなるので閉口した記憶があります。

 また「健康増進法」の抜け穴で、原則禁煙の居酒屋などの共有スペースでも、加熱式たばこだけは、喫煙室での飲食が認められています。店の大半を喫煙室として、一部に非喫煙スペースをつくる分煙という方法をとれば、屋内で加熱式タバコを吸うのは合法になるのです。受動喫煙が起こりやすい場所のNo.1が飲食店なので、タバコを吸わない蒼野としてはとても気になります。

 世界的には、紙巻きタバコと受動喫煙の害が広く浸透してきていることから、日本の社会も徐々に変わりつつあります。しかしタバコ産業と関連団体が、タバコ族議員を通して、既得権益の確保のため、加熱式タバコへの移行を世界で一番進めていることが、抜け道ができた理由の様です。

 加熱式タバコは嗜好品なので、本人は良いとしても、周囲に本当に迷惑をかけないのかが気になりますよね! これはニコチンについて調べた研究により明らかになりつつあります。父親が、紙タバコ、加熱式タバコを吸う家庭で、家族の尿のニコチン濃度を調べました。すると紙タバコの家族の尿中ニコチン濃度が高いのは当然としても、加熱式でも、かなりの数値を示していました。

 7000種も含まれる他の物質についても同様であると考えられるため、加熱式タバコの水蒸気は、有害成分も含めて受動喫煙のリスクがあることが判明したのです。量が少ないから大丈夫という論理は、食べたらすぐ死ぬ毒キノコは避けるけど、少しの毒のキノコなら食べ続けても大丈夫と言っているのと変わらない様に思います。家庭内や車の中でタバコを吸わなかったお父さんが「加熱式タバコなら大丈夫」と吸い始めることだけはやめて頂きたいと思います。

 紙巻きタバコの有害物質は異常に高い数値であることが研究により分かってきたので、全世界で使用が控えられる様になりました。しかし加熱式でそれらが大幅に減っていても、明らかな発がん性や、心血管病のリスクは残っています。少しでも発がん性のある食べ物を毎日食べ続けたいかどうかという問題と同じなのです。

 化粧品や食品、子供が触る玩具などに発がん性が検出されたら、すぐに回収されます。空調や加湿器から発がん性物質が出ていたら大問題ですよね! しかし喫煙者の呼気に含まれる発がん性物質は仕方がないとされているのです。特に日本はタバコが特別扱いされてきた国なのです。

 2025年は健康増進法の見直しの年ですので、愛煙家の方には悪いのですが、加熱式タバコも紙タバコと同様の扱いにして欲しいと願っています。世界中で年間800万人以上が死亡している健康障害要因が喫煙です。700万人が「喫煙者本人」で、約120万人が「受動喫煙による非喫煙者」です。

 WHOでは「タバコは最大の公衆衛生上の脅威」とし、喫煙を「病気の原因の中で、予防することができる最大にして単一の原因」として禁煙活動を強カに推進しています。「加熱式タバコ に切り替えたから安心 」ではありません。加熱式タバコ使用者の72%が、紙巻タバコも二重使用しているため、全体としてのニコチン摂取量と依存度は増えています。

 喫煙の本態はニコチン依存症です。脳の報酬系が、ニコチンが身体に入ることで快感を感じるのです。吸わずにいるとイライラしたり、不安になったりして落ち着きません。最初から吸わないのが一番なのです。害が少ないからと、加熱式タバコから始めるのは、蟻地獄にハマる第一歩です。ニコチン摂取量が増えれるほど、やめにくくなります。加熱式だからすぐ止めれる訳ではないのです。加熱式タバコからの禁煙も、最近保健適応に認められました。

 わが国ではタバコもアルコールも税収があるため、特別扱いになりがちです。必要な医療費を抑制するくらいなら、健康被害につながるタバコもアルコールももっと税率を上げて欲しいと思うのは、蒼野の私見です(タバコ命、アルコール命の方、ごめんなさい)。

 最後に混同されがちな電子タバコです。電子タバコは吸引器に入れたリキッドを、加熱で霧状ミスト(vapor)にして、吸い込むものになります。海外ではニコチン入りとそうでない物がありますが、日本ではニコチン入りは許可されていません。新しいために規制が緩く、個人輸入は可能です。もちろんニコチン入りも手に入りますし、大麻や覚醒剤といった違法薬物が入ったものさえあると聞きます。

 健康に関しては、ミストに発がん性のある物質が出てくるものが報告されていたり、動物実験では、マウスの肺の免疫機能が低下したり、呼吸器感染症に罹らせた時の致死率が上昇したりすることが報告されています。海外では未成年の使用率が高く、使用者がタバコに移行する確率も高いことが分かっています。まだデータが少なくなんとも言えませんが、あまりお勧めできるものではなさそうですね! 既にアメリカの一部の州や、国でも禁止されているところが出てきました。

 世界的にも、屋内での全面禁煙の法律を持つ国は、67カ国と増えてきています。世界一の少子高齢化社会になり、今いる国民の健康が何より大事になる日本が、世界一の健康の先進国になってくれる日を夢見る蒼野でした。

参考記事: 加熱式たばこを巡って“炎上”続出、「水蒸気だから迷惑かけない」の大誤解https://diamond.jp/articles/-/311142?utm_source=daily_dol&utm_medium=email&utm_campaign=20221013

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