ストレスは若返りの薬!

2022/10/19

 今日は適度なストレスは身体に良いというお話です。ホルミシス効果とも言われ、身体の細胞は、適度なストレスがあると、細胞内にストレスタンパク質が出来ることで、ストレスに強くなり、ストレスで傷害された部分を修復し、以前よりも強くなります。

 筋トレと一緒ですよね。ぎりぎりの重さで限界まで筋肉を使うと、筋肉の一部が壊れ、それが修復されて強くなることで、超回復するため、以前よりも筋肉がついて大きくなり、次の時には同じ重さでも少し余裕ができるということに似ています。

 細胞が適度なストレスで強くなるメカニズムというのは、大腸菌からヒトに至るまで、全ての生物が持っているものです。地球上で、強力な紫外線、宇宙線、高温などにあふれた、過酷な環境で誕生した生命が持つ細胞には、生まれた時から、さまざまなストレスに対抗するストレスタンパク質を作る能力が備わっていたからだと考えられています。

 シナシナになったレタスを、50度のお湯に90秒浸けると、レタスの細胞内にストレスタンパク質が出来て、シャキッとなり、鮮度が戻って甘味が増し、表面が酸化して断面が褐色にならなくなります。野菜の寿命が延びるのです。

 また25℃で培養する酵母を、一気に50℃の環境に移すとほとんどが死んでしまいます。しかし、いったん37℃に移してストレスタンパク質を増やした酵母では、50℃に移動しても、細胞死がほとんど起こらなくなるのです。

 我々哺乳類の身体の細胞は、43度の温度が続くと死んでしまいます。しかし培養細胞を40度の中に30~60分置いて、ストレスタンパク質を作っておくと、43度にしても生き残るということも実験で確認されています。死なない程度のストレスをかけておくと、細胞が強くなるということなのです。

 これは我々の健康長寿にも、若返りにも使えるお話です。実験的には熱によって出来るタンパク質ということで、発見時にはヒートショックプロテイン(HSP)と呼ばれていました。この物質は熱だけでは無く、寒さへの曝露や、紫外線、薬剤や毒物、創傷や炎症、低酸素や活性酸素、飢餓などに際しても、耐えられる程度のストレスで細胞内に出てくるのが確認されているのです。

 死なない程度のストレスがかかる生活で、我々は強くなり、若返り、健康に長生きすることが出来ます。面白いですよね。世界最長寿のフランス女性が、毎日タバコを1本だけ吸って、ワインを1杯飲んでいたことや、酸素の薄い巣の中で群れで暮らすハダカデパネズミや、北極海の氷の下で、長時間息を我慢するホッキョククジラが長寿であるメカニズムがここにあります。

 ストレスタンパク質は細胞内に出来ると、傷ついた細胞内タンパクに寄り添い、ユビキチンという物質をくっつけてマークします。ユビキチンがついた器官が、酵素複合体であるプロテアソームによって分解され、作り替えられます。新しくなるので若返ります。ストレスタンパク質は、細胞内の壊れた部分を治し、メンテナンスする物質なのです。

 オートファジーも、同じように細胞を作り替えるメカニズムです。細胞のリサイクルシステムは、「ユビキチン-プロテアソーム系」と「オートファジー」の二つがあります。ユビキチン-プロテアソーム系は、個々のタンパク質ごとの小規模な分解方法で、オートファジーは一度に多量のタンパク質をまとめて処分する分解方法になります。

 我々の健康長寿とアンチエイジングには、どちらも活性化出来ると最強ですね! それでは具体的な方法を、みてゆきましょう。まず思いつくのがお風呂やサウナです。40度のお湯で20分くらいからストレスタンパク質が出てきます。必ず湯船に入って、細胞を鍛えましょう。

 サウナはもっと良いですね。温熱でも寒冷からもストレスタンパク質が出来ます。ストレスタンパク質ができれば、温度ストレスだけでは無く、他のストレスにも強くなるのです。フィンランド人の研究ではサウナの回数が多い人ほど死亡率が低下します。嫌いでなければ、ぜひ活用しましょう。

 運動はストレスタンパク質を活性化し、身体を若返らせます。特に関節や骨を鍛えるのに有効です。軽くジャンプしたり、走ったり、筋トレしたりすると、物理的な負荷が、身体中の細胞への適度なストレスとなります。ストレスタンパク質が骨に作用することで、骨のコラーゲンを修復し、骨芽細胞が活性化して、骨が強くなります。

 関節軟骨は血流も神経も乏しい部位です。長年使っているとすり減ってきて、変形性膝関節症のように、痛みが出て来やすい部位なのです。軟骨成分をいくらサプリなどで摂っても、関節軟骨まで運ばれなければ修復は出来ません。しかし運動で機械的な負荷が掛かると、軟骨細胞自体からストレスタンパク質が生まれ、自らを修復するのです。

 関節が痛くなったお年寄りが、毎日ストレッチや軽い筋トレをすると、痛みが軽減してゆく理由がようやく分かりました。運動によって周囲への血流も良くなるため、一石二鳥なのです。筋肉を付けるような運動で無くて構わないのです。幾つになっても日常生活を、不自由なく行う運動は、ストレッチや歩行、軽いジャンプや体操で十分です。

 メンタルが弱っている時は、じっとしているとさらに悪くなります。身体を動かして身体中の細胞でストレスタンパク質を増やせば、ストレスによるコルチゾールや炎症性サイトカインで痛んだ脳細胞も回復し、最近では脳細胞自体が変化してくることがわかって来ている鬱などのメンタル疾患も改善しやすくなるのです。それが朝散歩が、抗うつ剤よりも効く理由なのだと思います。

 ストレスタンパク質によってお肌も若返ります。コラーゲンには種類があり、皮膚はⅠ型とⅢ型コラーゲンで出来ています。より重要なのはⅢ型で、赤ちゃんのお肌はⅢ型が20%くらいあり、瑞々しくプリプリです。これは加齢とともに減少し、成人すると10%と半減してしまいます。しかしストレスタンパク質によって、Ⅲ型コラーゲンを増やせるのです。

 Ⅲ型コラーゲンは血管や内臓の主なコラーゲンでもあります。血管や内臓が若返れば、身体も若返りますよね! 食べ物では茹で卵の表面の薄い鶏卵殻膜にⅢ型コラーゲンが増えるのを助ける成分が多く入っているそうです。しかし鶏卵殻膜をそのまま食べても、消化しませんので、サプリや化粧品に応用されているそうです。気になる方は調べてみてくださいね!

 ストレスタンパク質が豊富だと、細胞自体の分裂が遅くなるようです。分裂するたびに命の回数券で有るテロメアが短縮するため、健康長寿のためには、分裂が遅い程良いと言われています。毎日身体を動かすことで、これが実現できるのです。運動ってめちゃくちゃ身体に良いということを蒼野も再認識しました。診察室で見る元気なお年寄りは、一人残らず毎日歩いているのも、当然なのです。

 毎日しっかり動いて遅筋を鍛えましょう。出来ない日はストレッチだけでも構いません。ゆっくり湯船に浸かれば、良い睡眠が待っています。本当にだるくて動けない時は、しっかり休む必要がありますが、なんとなくだるい時にはダラダラせずに動くことが最善の、疲労回復法になります。

 蒼野も今までの知識がまた整理された気がします。ちょっと嫌なことやトラブルも、若返りの薬なんだと思えるようになった蒼野でした!

参考書籍: ほどよいストレスが人を若くする  跡見 順子

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過去ブログ:

https://blue-zone-life.com/テロメア/

https://blue-zone-life.com/アクティブレスト/

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