低血糖と低血圧の関係!

2022/09/03

 今日は低血糖と低血圧の関係について、新しく勉強したので、書きたいと思います。自分の体験からも、納得できる部分が多かったので、先日の隠れ低血糖の話の続きとして、原因が見過ごされている、我々のさまざまな不調に繋がっている病態なのではないかと思ったのです。

 高血圧については、血管を痛め、動脈硬化の原因となり、脳卒中や心臓病などの、命に関わる疾患の1番の原因であるとされているため、健康診断でも、病院に行っても、測定されて、目標値に収まるよう指導されています。

 一方低血圧に関しては、朝が弱いとか、立ちくらみやめまいがするなどの原因となると言われるものの、積極的に改善しないといけないという話はあまり聞きません。蒼野も、強い症状が出ているもの以外は、正常の範囲内と考え、放置してきてしまった病態なのです。

 WHOの基準では、収縮期血圧(上)100mmHg以下、拡張期血圧(下) 60mmHg以下が低血圧症と定義されていますが、細身の女性や高齢者ではよく見かける血圧でもあります。血圧は血管を中から押す圧力です。これには心臓が押し出す力と、血管の拡張程度(血管抵抗)が関係している値です。低血圧症の原因は体質や遺伝によるものと考えられていて、その病的な意義を教えてもらったことはありません。

 血圧が低すぎると、脳を始めとする全身の血流が悪くなり、症状としては、立ちくらみ、めまいが一番多く、朝起きれない、頭痛・頭重、倦怠感・疲労感、肩こり、動悸、胸痛・胸部圧迫感、失神発作、悪心などが起こることがあると、一般的には言われていました。少し休むと良くなったりもするので、程度が軽ければ、ほとんど病院での治療は行われていなかったのです。

 しかし最近の知見では、低血圧が主にメンタルの不調の原因になっている可能性が指摘されてきています。先日書かせて頂いた隠れ低血糖がその原因です。血糖値が下がると、エネルギーの原料が少なくなるため、エネルギー不足が起こります。一生動き続けている心臓では、エネルギー不足は大問題です。省エネモードにして乗り切る必要があるのです。

 その結果、心臓の収縮力が、少し低下します。血液を押し出すポンプ機能が弱まるため、若干血圧は下がるのです。一般には血糖スパイクと連動して起こることが多いと考えられます。食後の血圧低下時に測定すると、93%に低血糖が認められたというデータもあります。食後3時間くらいで、インスリンの過剰分泌によって血糖値が下がると、血圧も下がりやすくなるのです。

 低血糖症+低血圧症! これは身体にもメンタルに重大な影響を及ぼします。身体はグルカゴン、コルチゾールやノルアドレナリンを放出して対応します。自律神経の調子は乱れ、怠くなり、やる気が無くなり、感情コントロールが難しくなります。憂鬱や動悸、イライラなども起こりやすくなります。

 うつ病の診断で、どこの外来でもできる簡単な検査に、SDS(自己評価式抑うつ尺度)という質問に自分で答える検査があります。蒼野もクリニックの外来で使っていて、点数が高い時には心療内科に紹介していました。20問の質問からなるこの検査ですが、実は低血圧の症状に20問中15問が関係しており、低血糖の症状に20問中18問が関係していることが分かっています。

 隠れ低血糖と低血圧の症状で病院を受診し、様々な不調を訴えると、うつと間違われるということです。もちろん心療内科で薬を貰っても、治るはずがありません。最近薬剤抵抗性うつが増えている原因は、起こる頻度から考えても、低血糖症+低血圧症の誤診である可能性が高いのではないかと、蒼野も思います。

 血糖スパイクを起こすと、高い血糖の一部がアルデヒドに変わり、周囲のタンパクを変性させます。これが糖化です。赤血球に糖化産物がくっつくと、赤血球は変形したり、つながったり、かたまったりするルーロー形成を起こし、細い血管の中で流れにくくなります。いわゆるドロドロ血です。虚血が起こった部分には活性酸素が余計に作られるため、酸化も進んでゆくのです。

 血流が悪ければ、酸素の運搬も滞るため、ミトコンドリアのエネルギー産生は低下し、さらに血圧は下がりやすくなります。知らないうちにそういう悪循環に陥ってしまうと、病院に行ってもなかなか診断できない、心と身体の不調に悩まされることになってしまうのです。とても恐ろしいことだと思います。

 先日も書いたように、低血糖になると、副腎からのホルモンが出続けるため、自律神経失調や、副腎疲労につながります。副腎が疲れてコルチゾールやノルアドレナリンの分泌が不足するようになると、アレルギー疾患も増え、低血圧も低血糖症も慢性化し、脳にも影響が出てきます。

 また血糖スパイクができやすい人は、膵臓の反応が過敏なため、過剰なインスリン分泌を繰り返すうちに糖尿病にもなりやすいのです。太っているイメージのある糖尿病ですが、血圧が低くて、痩せている女性やお年寄りでもよく見かけます。毎日お饅頭を食べて、フォロー中にアルツハイマーが著明に進行したおばあちゃんもこういうパターンだったのを思い出しました。

 低血糖症+低血圧症の病態が多いのは、華奢な女性や、虚弱なお年寄りです。あまり食べれないと言って、主食をメインに食べている人が多い印象です。食後にふらついて転倒して怪我をしたりする方もおられます。消化機能の問題も有ると思いますが、工夫して、糖質量を控えてゆく必要があるのです。

 蒼野は糖質制限で血糖スパイクを起こさない食生活を基本にしているのですが、コロナ前に学会で出されたお弁当を、ご飯まできれいに食べると、どんなに起きておこうと思っても、午後の講演を聴いている途中で、必ず意識が無くなるように、寝ていたことを思い出しました。また大昔に、ご飯やパンをいっぱい食べた後の車の運転中に、時々意識が遠くなりかけたことがあるのも思い出しました。

 今日この本を読んでいて思ったのは、最近注目されるお年寄りの事故の原因として、この病態が影響しているかも、と思います。糖尿病の人の低血糖発作と事故の関係を調べたデータもありましたが、糖尿病のない人でも、十分に起こしうる病態のようなのです。

 日本糖尿病学会の論文には、高齢者はわずかな低血糖状態でも認知機能が低下し、瞬間的な判断ができなくなるため、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどが起こってもすぐに対応できないとされています。運転前にGI値の低い糖質を食べておくべきとの結論が示されていました。蒼野もブレーキとアクセルの踏み間違いの原因や、重大事故になる居眠りの原因が、認知症というのは腑に落ちなかったので、低血糖症+低血圧症が一番怪しいと、思い始めました。

 おやつの時間は午前10時と午後3時です。ちょうど朝食や昼食後3時間後くらいの時間帯になります。江戸時代は一日2食でしたから、間で食べる間食はやつどきと呼ばれ、午後2時から4時の間だったそうです。午後3時が一般化したのは1960年の文明堂のカステラのCMからだったそうです。ちょうど血糖値スパイクが起こるような食べ物を食べ始めた時期と重なることを発見し、蒼野は大きく頷きました。

 おやつは血糖スパイクによる、低血糖を防ぐための知恵なのでしょう。外国でもほぼ同じ時間に食べられているようです。つまり低血糖症+低血圧症は生活習慣病です。糖化+酸化を引き起こし、老化を促進してさまざまな生活習慣病の原因となります。健康長寿のためには、血糖スパイクを起こさない食べ方を心がける必要があるのです。

 具体的には過去ブログをご参照ください。低血糖症+低血圧症を起こしやすい人は、喫煙者で痩せていて、血圧が低めの人です。胃下垂や貧血、アレルギー体質の人もリスクが高いです。消化が悪く栄養が吸収しきれない人、メンタルが不安定な人、食後に眠くて、コーヒーが手放せないような人は、是非食事を変える必要があります!

 これからもロカボでベジファースト、スイーツは(食べたいけど)食べ過ぎない生活を心がけたい蒼野でした。

参考書籍:「血糖値スパイク」が万病を作る!    永田 勝太郎

もし記事が良かったよ!と思われた方は蒼野健造公式ラインのボタンをポチッと押して、ご登録くださいね。ライン登録された方で希望される方は、オンライン面談での相談に乗りたいと思っております。